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タクシー業務の事故時にも安心の補償

最終更新日 2021年3月8日

監修・著者 株式会社しごとウェブ 佐藤 哲津斗

タクシー運転手をやってみようと考えた時、事前にメリットとデメリットをよく調べることは、やはり重要です。デメリットの一つになりそうな分野が、交通事故ではないでしょうか。

やはり普通の人と比べても数倍、数十倍もの時間を車の運転に費やすことになるので、その分交通事故に遭う確率も上がることになります。どれだけ気を付けて運転していても、時にはもらい事故という不運もあるからです。

では、もし交通事故に遭ってしまったら、もしくはもし事故を起こしてしまった際に、タクシー会社は助けてくれるのでしょうか?それとも自分で対処しなくてはいけないのでしょうか。

タクシー運転手に事故はつきもの?

実はタクシー運転手が事故を起こす確率は、特筆するほど高いということはありません。

実際に東京では一日3万台以上のタクシーが稼働してますが、タクシーが第一当事者になった事故というのは年間で4,000件を少し上回る程度にすぎません。ちなみにこの場合の第一当事者とは、事故発生時において一番過失の重い当事者、もしくはその事故の主原因になった当事者のことを指します。

やはりタクシー運転手は、通常の運転免許証よりも難易度の高い、二種免許の所持者ということもあって、運転時間に対する事故発生比率は非常に低くなってます。しかし、やはりそれでも運転時間が長い分、思いがけない事故、もらい事故などに巻き込まれることもあるでしょう。

タクシー運転手に事故はつきもの、とまでは言い切れないものの、所属するタクシー会社が事故時にどんな対応をしてくれるのかという情報は、あらかじめ知る必要があるでしょう。

法律で決まっている補償の範囲

民法では、雇用された側(この場合はタクシー運転手)がその自分の仕事において他人に損害を加えてしまった場合、その人を雇用している側(この場合はタクシー会社)がその損害を賠償する責任を負う、と規定されています。

加えて自動車損害賠償保障法という法律では、自動車を運行させている側(タクシー会社)には、その運行によって他人にケガをさせたり何かの損害を出してしまった場合に、その損害を賠償する責任があるとも定めています。

つまり、タクシーが何かの損害を出した時に、それを「直接」補償するのはドライバーではなく会社だということです。またタクシー車両は、一台一台しっかりと任意保険に入ることが義務付けられています。

ちなみに時々、一台一台保険に入ると保険料が高額になってしまうので、自賠責のみだけに保険を使わずに、万が一何かあった場合にはタクシー会社が損害を補償するという意見がネットで散見されます。

実はこれは任意保険への加入が義務付けられる前に、大きなタクシー会社が採用していた方法でした。しかしもうこの仕組みは使われなくなったので、従業員側の立場からは、より安心した保証が得られるようになったのです。

会社によって違う補償の範囲とは

この部分は、会社に入ることを決定する前にしっかりと確認しなくてはならない部分です。その理由は、事故を起こした場合に、罰則金という形で多額の金額を支払わされる場合があるからです。

特に上述したとおり任意保険がない時代には、よりこの傾向が強かったようで、それゆえに「タクシーはブラック企業だ」という印象を、多くの人が持ってしまったこともありました。

事故を起こした場合に、運転手にどんなペナルティーがあるのかは、会社によって分かれる部分であり、確認を忘れないようにすべきでしょう。

一長一短ということもあり、給料が高い代わりに事故時のペナルティーも高いという事もあり、逆に給料は低めであっても、保証がしっかりしているという場合もあります。

また、基本給の中に「無事故手当」というのをあらかじめ含ませ、事故を起こした場合や運転業務を行えなくなった場合にその手当を差し引く、という方法もあります。

これは結局は、無事故手当を会社が毎月支払っているというよりも、基本給の金額を変えず、ただ明細の項目の名称をひとつ変えているだけ、という事になります。

結局は事故を起こした場合に、罰金として給与から差し引かれるのと変わりありません。その金額は会社によっては1万の場合であったり、2~4万という高額な無事故手当が設定されている場合もあり、特に注意が必要です。

だからこそ、上述の項目で損害を「直接」に補償するのはタクシー会社の責任と書いたのです。つまり、何らかの形で「間接的」に支払いを求められることはあるからです。

ただ、もし大きな事故をしてしまったとしても、この「無事故手当」が支給されなくなるだけで済むと考えると、運転手側も安心でしょう。会社によっては最初から、事故による補償を全く求めないという条件をウリにしている所もあります。

また、大きな事故によって体調を崩してしまった場合でも、ほとんどの場合は給与補償という制度を持っているため、この部分でも安心です。

営業はしていない分、歩合に関わる部分は支給されない事になりますが、基本給与がしっかり支払われるという会社が少なくありません。

勿論この場合も、幾らが支払われるのか、そして最大どれだけの期間に渡って支払われるのかは、その会社で個別に決まっているものです。働く前にしっかりと確認する必要があります。

物損事故に関しては会社によって、ほとんどペナルティーもなしという場合も少なくありません。ある程度の大きさのタクシー会社になると、自前の整備工場を持っていることも多く、またパーツのストックもある程度持っているので、それほど金額的な損害がなく、業務に復帰できる事がその理由です。

しかし、いくら物損のみだったとしても、事故の回数が増えるほどにドライバーとしての信頼を失っていくことは忘れてはなりません。場合によっては特別講習を受けさせられる場合もあり、それが数日に渡ると当然収入も減ってしまうことでしょう。

死亡事故のような重過失の場合は即刻クビになる可能性がありますが、事故に遭っても解雇になったり、多大な損害補償を強要されることはほとんどありません。しかしやはり最も重要なのは、最初から事故を起こさない事です。

事故を起こさないための各社の取り組み

運転手たちが事故を起こさないために、各社で色々と取り組みを行っています。まず飲酒運転の検査は勤務前の最初のステップと言えます。タクシー運転手がお酒を飲み、そのまま勤務をしようとするケースはまず無いでしょう。

しかし、より気をつけなければならないのが前日のお酒などで、思っていたよりもアルコールが残っており、次の日の勤務前でも依然影響がある場合も考えられます。

当然その状態で運転するのは法律違反であり、なによりも判断力の低下などによって様々な影響が及び、大事故につながりかねない危険があります。

それを直前で回避するために、このような検査機を導入しているのです。業界全体で製作したという「タクシードライバーのための疲労蓄積度自己診断チェックリスト」というものがあり、それぞれのドライバーが、自分の状態を客観的に判断するために用いられています。

やはり居眠り運転やわき見運転(集中力の低下)などは、本人の疲労やストレスから発生する場合が多いので、その状態まで体を疲れさせずに体調管理するためにとても役に立っています。

会社によっては、優良ドライバーへの表彰やボーナスの付与という形で安全運転を促す取り組みも行われており、ドライバーがポジティブにその目標に向かい、安全に関して努力出来るような仕組みとなっています。

また車両を多く有する会社になると、40台につき一人の割合で運行管理者を置く必要があり、安全にそれらの車が運行できるように安全管理が行われています。

「タクシーとは事故るな!」はなぜ?

タクシー運転手の側からではなく、一般の人々からの目線で、「タクシーとは事故を起こしてはいけない」とよく言われています。

法律上はごく普通の車両と変わらない扱いの筈なのに、どのような理由があるのでしょうか。

タクシーが起こす物損事故の場合、30万円以下の損害の場合は保険を使わずに処理できる(会社が自分で交渉できる)という免責事項がある場合が少なくありません。

大きな会社になると、事故の対応を専門に扱う部署があり、上記のような小さい物損事故の場合は保険会社や事故を起こしたドライバー本人では無く、このような各社の担当者が交渉相手として出てきます。

やはり彼らは会社の人間であり、出来る限り少ない補償額で物事を収めたいと考えています。事故の対応にも非常に慣れており、もしこちらが個人的に交渉しようとしても、簡単に勝てる相手ではありません。また大きな事故になった場合にも、同様の理由で交渉が難しいものがあります。

任意保険が義務化されて以降、ほとんどのタクシー会社が入っている保険は、大手の保険会社のものではなく、タクシー共済と呼ばれる保険、つまり仲間内でお金を出し合って作った保険会社です。当然こちらも、非常にシビアな交渉となるのは目に見えています。

しかし、タクシードライバーの側から考えると、これはポジティブに映ります。まず自分が交渉の席に着かなくてはならないということはありません。勿論道徳的には、時には直接の謝罪が求められることはあるでしょう。

会社からはしっかりと守ってもらえるという事実を踏まえ、事故の際にパニックになることは避け、まずは事業所に連絡して指示を仰ぐようにしましょう。

事故以外に運転手が気を付けるべき金銭的損害とは

タクシー運転手が気を付けるべきは、事故を起こすことだけではありません。むしろ多くの場合、事故は第一当事者の交通違反行為が引き金になっていることを考えると、交通法規に則った運転をするように心がけることが最優先事項となるでしょう。

スピード違反や一時停止無視といった違反は言うに及ばず、右折レーンや直進レーンの表示に従うこと、無理な車線変更などをしないことなどについても、運転の基本と言えます。

タクシー運転手は絶えず「運転のプロ」として、全てのドライバーの模範となる運転が求められていることも忘れてはなりません。ちなみに、事故時の補償に関しては会社が責任を持ちますが、違反行為によって罰金を課せられた場合には、ほぼ全て運転手の責任となります。

また勤務中の違反に関して、それが重大な事故を引き起こしかねない悪質なものだったと判断された場合、会社からも何らかのペナルティーを課されることがあります。

例えば赤切符と呼ばれる、裁判所への出頭が求められるような違反行為だった場合などが、これに当たります。

営業運航の停止処分にもなると、歩合にも大きく影響を及ぼしてしまいます。特に夜勤帯の勤務の時は、乗客から交通違反となる行為を求められることも少なくありません。

近くなるからということでの一方通行の逆走行為、「急いでほしい!」とスピード違反を求められることなども考えられます。

そのような場合でも、しっかりと断る勇気が必要で、そのような心構えが、その先にある重大事故を避けることにつながるのです。

いつでも安全運転を心がければ

事故を起こさない最善の方法は「安全運転」に他なりません。だからこそ会社によっては、右折時や左折時の指差し確認を義務付けている場合もあります。

指差しを徹底することによって、うっかりとした見落としやミスを大幅に避けられるようになるからです。

タクシーの仕事を始めようと思われている方は、まずその会社がどういった補償システムを持っているのかについての確認は、最初にする必要があります。

しかし同時に、どのような「事故を起こさないためのシステム」を持っているかにも、気を遣うようにしましょう。

その会社が事故を防ぐような体制が整っているほど、事故に対して後手後手にならず、先手を打ってポジティブに対処していることが分かるからです。

ひとりひとりの従業員が、より安心して働けるような体制がしっかりと整えられている会社と言えるでしょう。

最近は求人情報を出す段階で、ある程度の事故に対する処置を公開していることも少なく無いのですが、事前説明会の時や面接の段階で、より細かく聞く必要があるでしょう。

その際に確認すべき重要ポイントとして、以下の4つが挙げられます。

  1. 事故に遭った時ではなく、自分が第一当事者の場合の事故で会社はどんなサポートをしてくれるのか
  2. 運転手が何かを支払う必要があるのか
  3. ケガなどでしばらく仕事が出来なくなった時の補償は
  4. 事前に、事故にならないようにどんなサポートが行われているのか

ちなみに確認を前の三つだけでやめてしまうと、会社の側も「事故する前提で話をしている」という印象を持ってしまう可能性があります。

しかし、最後の質問を付け加えることによって、良い心がけをしているようなイメージを与えられるでしょう。

何より、安心して働ける会社であることが重要なのです。多少の売り上げの増減よりも、まず社員の安全を最優先しているような会社を選ぶべきでしょう。


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