タクシーの歩合給で高収入を実現する
最終更新日 2021年3月8日
監修・著者 株式会社しごとウェブ 佐藤 哲津斗
求人誌やインターネットなどの求人情報を見ると、必ず載っているのがタクシーの求人情報です。
特に大手のタクシー会社になると、福祉は大企業並みに揃い、社宅も完備され、しかも給料の平均は400万以上と書いてある場合がほとんどです。
全くの未経験から始める仕事で、これほどの環境や収入が整う職種は中々ありません。
もし書いてあることが本当だとしたら、今すぐにでも始めたい仕事の筈ですが、なぜかいつも人を探している様子…。
もしかしたら、ここに書いてあることは実は嘘で、実際はとんでもないブラック企業なのかも、とも思ってしまいます。
ではタクシー運転手の仕事は、本当に高収入を稼げる職種なのでしょうか。
タクシー運転手イコール稼げるではない
求人誌の情報でまず注意を払いたいのが、社員は「平均」400万円以上を稼ぐという言葉です。つまり、400万円以上を稼ぐ方も、全く400万円に届かない方もいるということを意味します。
そうです、「タクシー運転手イコール稼げる」というわけではないのです。だからこそ続かずに辞めていく方もいて、会社がいつも求人を出すことになる理由の一つになっています。
タクシー会社が保証する最低給与はほとんどが15万~20万程度です。稼いでいる方の給料のほとんどは、乗客が支払った会社の売り上げからのキックバックつまり歩合という形になります。
大体の会社が、売り上げの中の五割を運転手に給料の形で支払います。つまり、もし仕事で全く稼ぐことが出来ないとしたら、その方の給料は15万円に少し足が出る程度、年収にするとボーナスを入れても200万円程度ということになるでしょう。これではとても魅力の稼ぎということは出来ません。
ただ考えるべきポイントとなるのは、なぜ高収入を稼ぐ方や、全く稼ぐことが出来ない方もいるのか?という点です。タクシーの運転手は、主たる仕事自体は全く難しいものではありません。
タクシーに乗りたい方を探して、車に乗せ、希望の場所まで送ってその対価を受け取る、これがタクシー運転手の主な仕事です。
この同じ仕事内容で、なぜにこれだけの差が出るのか?その部分を明らかにすることで、タクシー運転手の仕事で稼げるかどうかが決まってくるのです。
では「高収入を実現するために」、どのような事が必要となるのでしょうか。
働く時間帯によっても収入は変わる
タクシー運転手としての働き方には3つの種類があります。
まず多くのタクシー会社が基本的な働き方として採用しているのに、隔日勤務が挙げられます。これはおよそ朝の7時ごろから勤務を開始して18時間から21時間程度の連続勤務をした後、1日から2日の休みをもらうという方法です。
勤務中は3時間の休憩が義務付けられているほか、勤務後20時間は最低でも乗車業務には就いてはいけないと定められています。そのため、必然的に「隔日勤務」となるわけです。
この働き方では、乗客が数多くいる時間帯から、全くいない難しい時間帯まで全てを自分で引き受けることになるため、同じ時間帯で働く運転手の中でも最も収入差が広がってしまう方法です。次が日勤、そして夜勤です。
日勤は基本的に普通のサラリーマンと同じような時間帯で働く方法で、朝の7時、もしくは8時から夕方までの8時間勤務です。夜勤は日勤のその後を引き受けて深夜の3時頃まで働くことになります。
三つの中で最も収入が少なくなってしまう事が多いのは当然、日勤です。その理由は、同時間帯はまだ全ての公共交通機関が稼働しているため、ライバルも多くて乗客の移動距離も少なくなってしまう事が多い事が挙げられます。
収入よりも家族の状況が優先になる方や、体力的に長時間労働が辛くなってきた年配ドライバーが比較的多い時間帯になります。
乗客の層も中高年層の病院通い、軽い移動、そしてビジネスマンの移動などが主となります。対して夜勤の時間帯は比較的高収入を得られるような時間帯と言えます。
日勤とは逆に時間が遅くなるほどに公共交通機関の稼働が終わっていき、タクシーの独壇場となっていきます。そして会社終わりにお酒を飲んでいく方、キャバクラへ繰り出す方や、そういったお店の従業員の割り合いが次第に多くなっていきます。
必然的に長距離移動が増えていくため、夜11時以降のタクシーの割増料金時間もそのまま運転手の収入アップに直結します。
その代わり、最初から新人に夜勤の時間帯を任せるタクシー会社は少なくなっており、どんな時間帯で募集しているのかをよく調査する必要もあります。
低収入のタクシー運転手がいる理由
では、例えば同じ隔日勤務で働いているのに、なぜ片方は月給20万円にも満たないような収入で、もう一方は月給50万円を超えるような収入を得られる事になるのでしょうか。
あまり高収入を得られない方の多くに共通する意識が、「なるべく働きたくない」というものです。
現状維持が好きというわけではなく、もっと収入を得たいという願いよりも、楽をしたいという思いが勝ってしまうということです。
彼らも当然、出来ることならもっと多くの収入を得たいと思っているのですが、それでも、本人の努力が足りないために、収入アップが困難になってしまい、その結果仕事への不満も溜まってしまいます。
今だにタクシー運転手の仕事がブラックだという考えも、世の中には根強く残っており、その根拠の一つに現役タクシー運転手からの声があります。
しかし、そういった不満の声を上げる運転手は、ほぼこの手のタイプの楽をしたいという層の方でしょう。では彼らの問題点は、どこにあるのでしょうか。その一つとして、情報収集を怠ってしまうことが考えられます。
一例をあげましょう。ある運転手は仕事が終わってから家に帰り、テレビを見ながらご飯を食べ、そしてお酒を飲んで眠くなって寝るとします。
起きてからまた仕事に行くまでテレビを点けて準備して出勤し、漫然と乗客を探したり、駅などでタバコを吸いながら出待ちをしつつ、他の運転手さんと雑談します。ぼちぼち乗客を乗せ、仕事終わりを待ち、また家に帰ってテレビを点け…という周期で仕事をしています。
問題は、惰性で仕事をしていることにあります。情報を収集する運転手には「いつものパターン」というものがありません。
人の流れがどこに行くのかを毎日チェックしてから仕事に向かうので、車で流す場所や、出待ちをする場所も変わってくるからです。
タクシー運転手をする上で一番難しいのは、「人を探すこと」ではなく、「自分をコントロールすること」だそうです。結局誰かのコントロール下で仕事をするわけではなく、ずっと一人で仕事をするからです。
仕事をしているように見せかけてサボる方法は幾らでもあるわけで、結局それらの行動の結果は売り上げにのみ現れてきます。
仕事をしている最中も、仕事の前後も、いかに自分の「したいこと」をコントロールして「するべきこと」に目を向けられるかが、高収入を得られるか、そうではないかに関わってくるのです。
タクシー運転手で高所得を狙うには
ではタクシー運転手の仕事で高所得を実現するためにはどのような努力をする必要があるのでしょうか。
簡単にいうと、全て上述の「稼げない方」の逆を攻め続けることです。それによって、必然的に売り上げは上がっていきます。
当然、どこの地域でタクシー運転手の仕事をするかによっても売り上げは大きく変わってしまうので、一概に幾ら以上の売り上げは簡単に…という括りをすることは出来ません。しかし東京を除く全国の平均はおおむね300万、東京ではこれが400万円となります。
ほとんどの方が車を持っているような事情から、地方に行くほどに高い売上を実現するのは難しくなります。また逆に、人口が50万人~100万人を超えるような政令指定都市など、人口が多いほどに東京のレベルに近い売り上げを出すことが可能になっていきます。
つまりまず高収入を得るための最も簡単な方法は、大都市でタクシー運転手をするということです。例えば東京や大阪、横浜、名古屋のような町で年収350万~400万円を得ることは、全く難しいことではありません。
タクシー運転手の間には600万の壁と呼ばれているものがあり、誰でも達成できる年収の最上位が600万円、そしてその上にいくにはやはりセンスが必要になってくるといわれています。つまり、反対に、このレベルまでは努力次第で誰でもたどり着けるという事なのです。
600万円というと大企業の係長~課長の管理職と同程度の年収になるため、全く悪い話ではありません。では大都会でタクシーの仕事を探すという以外には、どのような手段があるのでしょうか。
上述したように、情報収集はタクシー運転手の仕事の中で大動脈のような重要性があります。
タクシー運転手の売りの一つは残業が無いという事なのですが、この情報収集に関しては、仕事以外の部分で行う必要があります。仕事中に情報収集をすることが出来ないという意味ではありませんが、その時点でスタートが遅れているのです。
スムーズに乗客を見つけるためには、その日の乗客の流れについて、仕事を始める前から知っている必要があるでしょう。まず最も重要な情報として、各地で行われるイベントについてのものが挙げられるでしょう。
どこで行われるのか、何時に始まって何時に終わるのか、などを事前に調査を済ませる事によって、効果的に乗客を確保出来るようになるでしょう。
この場合、最寄りの駅はどこなのかという情報も重要です。イベント前には、最寄り駅で待つことによって、イベントに向かう方をキャッチ出来るからです。
もし自分の担当する区域に、イベントを定期的に開催する場所が含まれている場合には、インターネットでWEBサイトをお気に入りに登録するなど、いつでも情報を確認出来るようにすると良いでしょう。
その中には音楽ホール、スタジアム、公民館や大きなイベントホール、結婚式場やお葬式場なども含まれます。また、定期的にイベントを開催するわけではないにせよ、時々行事が行われる場所であってもチェックすべきでしょう。
よくあるのは学校の運動会などが代表的です。最寄り駅で待ち構るなどによって、運動会の後に校門前で乗客をキャッチできる貴重な機会と言えるでしょう。
運動会に参加した家族を拾ったような場合、家は通常の場合学区内となり近過ぎてあまり距離を稼ぐ事が出来ないのですが、祖父母の場合ちょっとしたチャンスになります。
これらの情報はまず大きなサイトでは見つからない場合が多いので、近所の情報を流しているローカルテレビ、新聞、またはインターネットの地区の情報板などで情報が得られます。
上述した通り、「自分をコントロールする力」は、このような時に非常に重要になる場面です。会社で残業をするよりも、オフの時に仕事のためにもうひと努力することは、意外に難しい面があるためです。
勿論これは業務にはあたらないため、直接に給料アップにつながるわけではありません。
しかし、これらの隠れた努力ことをコツコツと行うことによって、必然的に売り上げのアップへとつながり、最終的には自分の収入に反映されていくことになるのです。
タクシー運転手の仕事でお金と時間を手に入れる
タクシー運転手をする最大のメリットは、自分が働きたいスタイルに合わせて仕事が出来る点です。
少し体力が落ちてきた年配の運転手や、家族のために時間を使いたいというような方は、月から金の日中に働くという、ごく普通のサラリーマンスタイルが向いており、とにかく稼ぎたいという方のためには夜勤というスタイルが最適です。
また隔日勤務というスタイルは、自分の時間をより多く持つことが出来るという意味で、とても自由が利く仕事の仕方です。例えば月曜の早朝から火曜日の朝の3時ごろまで働き、その後帰って寝て、午前の11時頃に起きるとします。
するとその火曜日の午前11時から木曜の早朝に仕事を始めるまで、全てが自分と家族のためだけの時間に活用出来るのです。時には次の出勤がさらに金曜日まで伸びる公休という制度も利用可能です。
それでいて、収入は大きな会社の管理職レベルが得られる事もあります。多くの方はこの時間を趣味に当てたり、近隣をプチ旅行してきたりと自由に使っています。
仕事から家に着いて、すぐに奥さんと電車に乗り、温泉街の旅館などに泊まったり、家族での旅行を毎月の恒例にしている方もいらっしゃいました。
残業などもなく、そして仕事の内容的にも、皆で始めて皆で終わるということが出来ないので、他の社員との付き合いも必然的に少なくなっていきます。
その分、自分や家族にさらに目を向けられるようになります。安定した収入と自由な時間の両方を手に入れられる仕事は、オーナー社長などを除いたら、タクシー運転手くらいのものかもしれません。