タクシー会社による充実の福利厚生とその魅力
最終更新日 2021年3月8日
監修・著者 株式会社しごとウェブ 佐藤 哲津斗
タクシー会社に限らず、新しい仕事に転職する時の重要ポイントの一つが「福利厚生」と言えるでしょう。
職種や会社によってはパッと見の給与が非常に高かったとしても、全く福利厚生が整っていない場合が少なくありません。
そのような会社で何かあった場合には、収入がゼロになってしまうという危険も潜んでいます。
では、タクシー業界は平均的にどの程度、福利厚生が整っているのでしょうか。勿論、会社によっても差が出る分野なので、あくまで業界全体の平均、もしくはタクシー業界の中、大手企業あたりの例を考えていきます。
ちなみに、もしこれからタクシー運転手を始めようと思っているのであれば、特別なコネなどがない限り、まずはこのような名前も知れているような、大手の会社に入社すると間違い無いでしょう。その理由も後述していきます。
目次
他の職種と比べた時の充実具合は
筆者が調べた限りですが、現状インターネットの求人情報を通して、求人広告を出しているタクシー会社の給与体系には、ほぼ全て健康保険、厚生年金、雇用保険、労働保険、介護保険といった社会保険制度が完備されていました。
副業などをしていない限りは、自分で確定申告をする必要もなく、何かあった場合にも保険や年金は全てしっかりとしているような業界です。まず、この部分での心配はないでしょう。ちなみに当然のことながら、有給休暇の制度もしっかりと保証されています。
基本的には、勤続6か月を超えた時点で10日の有給が付与され、それから勤続年数に応じ、もしくは各社のシステムに応じて、その日数が増えていきます。
隔日勤務を採用している会社の場合、有給休暇と公休を組み合わせることで、平日に大きな連休を作り出すことも可能です。ちょっとした海外旅行にも行けてしまう事を考えると、大きな魅力と言えるでしょう。
給与保証制度は欠かせないポイント
タクシー運転手の給与は、基本的には歩合制と呼ばれるシステムが採用されています。会社にもよるのですが、個人で一日売り上げたうちの約50%~55%が、本人の給与に加算されていきます。また、会社や時間帯によっては、さらに高くなる場合もあります。
つまり乗客を運ぶほどに、給料も上がっていくのですが、経験もなく、乗客を探すためのコツも知らない新人が、すぐに大きな額を稼げるわけではありません。そこで重要になってくるのが、この給与保証制度というわけです。
新人として会社に入ってから、どれだけの期間に渡って最低給与が保証されるのか、ということは大きなポイントになります。この間に新人は経験を積み、自分の力で稼げるようになっていくということです。
この額、そして期間も地域差があり、やはり東京を中心とする関東圏はかなり割高になります。反対に地方へ行くほどに、額は下がってしまいます。
一例をあげると、関東圏でタクシーを運行する某企業の給与保証は、事業所によっても差があり、最初の月から30万~40万程度であり、これを3~4か月間、保証して支払うというものです。
同じ会社ではあるものの、事業所によっては、これが1年間続いて保証されるという場合もあります。また東海にある某企業では24万が半年間という保証でした。会社によってはこれが18万円の3か月間という場合もあります。
やはり場所、またタクシー会社自体の経済的体力によっても、かなり変わってしまう部分です。
その保証制度後は、完全歩合制の給与体系に変わっていくわけですが、基本的にどのタクシー会社も実は基本給というものを設定しており、これが大体13万~18万くらいとなっています。
つまり、給与が保証されている新人期間を終わってしまった後に万が一、全く売り上げを上げることが出来なかったとしても、収入がゼロになることはありません。この基本給は、その月の営業によって稼いだ歩合制の額が、基本給の額を超えた時点で支払われなくなります。
そのため、ほとんどの運転手は「完全歩合」で給与を受け取ることになるのです。
タクシー会社に社員寮ってあるの?
実は都市圏のタクシー会社に社員寮は必須なのです。その理由は、多くの地方出身者が職を求めて、タクシー会社の門をたたくからと言われています。
社員寮を持っていないと、せっかく来てくれた質の良い働き手を逃すことになりかねないため、特に中堅や大手のタクシー会社はほぼ必ずと言っていいほど社員寮を整備しています。
中にはアパートを丸々一件買い取って、寮として利用している会社も珍しくありません。この分野に関しては、小さいタクシー会社に関しても同様です。
会社とは別に、いくつかのアパートを借りている場合もあれば、社屋の3階以降から上が寮として使われている、というような場合もあります。
寮を整備している会社が求人広告を出す場合には、ほぼ寮の情報も入れる筈ですが、もし書いていなかったとしても、まずは確認してみると良いでしょう。
大手になると、独身寮と夫婦のための寮を、別個に準備していることもあります。
運転手になるために必要となる資格
まずタクシー運転手になるための最も重要な、そして最も難しく、また最も高額となる資格が二種免許と言われるものです。
普通の自動車を運転する一種免許の一つ上のレベルにあるもので、受験資格として、一種を取得してから2年間が経過している必要があります。
自動車教習所で取得することが可能ですが、費用はおよそ15万~25万程度と言われています。タクシー会社に入社するための必需資格ではありませんが、業務に入るまでには必ず取得する必要があります。
さらに地域によっては、地区のタクシーセンターなどに赴き、地理試験などを受験して合格する必要もあり、当然その費用も必要になります。最初の月にはまだ給与も無いため、その上でこれらの費用を支払うのは、かなりの痛手になりかねないでしょう。
そのため、この部分も福利厚生の一環として、援助をしてくれる会社が少なくありません。会社によっては取得援助という形で、半額から3分の2を支払ってくれる場合や、一時貸付金という形で全額を立て替えてくれる場合もあります。
ちなみに、一時貸付金制度を採用している会社は、ほとんどの場合に一定期間働いた後に同額を勤続ボーナスとして給付してくれるので、実質的に本人がその免許費用を支払うことはありません。
「一定期間」というのがどれくらいかは、会社や営業所によって大きく変わる部分ですが、よくあるのは2年間という縛りです。ちなみに、それ以外に必要となる資格への援助に関しては、ほとんどの会社が全て支払いを行います。
この部分も本人に支払いの必要はありません。会社によっては、免許取得後に2週間から20日程度の研修期間を設けており、ここで必要な資格を取得したり、会社の中で独自に設けているガイドラインに沿って本人を訓練していくことになります。
この中には、実際に営業する範囲に関する地理、また人の流れや売り上げの上げ方に関する情報などを徹底的に教え込むこと、また使用するタクシーの使い方、メーターやナビゲーションの利用の仕方などが含まれるでしょう。
ちなみに、タクシー会社が採用しているナビゲーションシステムは基本的に、普通の車のそれとは大きく異なります。
働けば働くほどに特典が
タクシー会社は昔から、「平均勤続年数の短い」職種として知られてきました。ゆえにキツイ、またはブラックだから…という印象も持たれやすいのでしょう。
ちなみに、この平均年数の短いことの原因になっていることの一つに、圧倒的に新卒よりも中途採用が多いから、という理由があることをご存じでしょうか。つまり、40代や50代で始める人が多い故、順調に仕事をしても定年で辞めていってしまう、言い換えると、勤続年数の平均を伸ばしてくれる人が少ないということです。
勿論、中には「思っていたのと違った…」「座り続けると腰が痛くて…」といったネガティブな理由から、すぐに辞めていってしまう人がいることも事実です。
しかし実は、サラリーマンだった人が脱サラしてタクシー運転手になることも多く、その場合の離職率は著しく低いという調査結果からも分かるように、タクシー業界は、勤続年数の長い人に非常に優しい業界だということがわかります。
上述した通り、少なくとも2年働いた場合には、免許取得費用がチャラになることに始まり、年数が長くなるほどに様々なボーナスが付くことも珍しくありません。
会社によっては、2年の時に支払われる褒章があり、免許取得費用の倍額、つまり取得費用と同じ額がさらにボーナスとして支払われる、という場合もあります。
やはり会社にとっても、新しい人材をその都度訓練するよりも、一度訓練した人に長く勤めてもらった方がずっと売り上げにもプラスになるので、大切にする傾向が強くなります。当然他のドライバーを監督する立場になったり、営業所の責任者になったりという、出世の道も見えてきます。
中には、同じ業界の中で会社を転々とする方もいるようですが、一度入ってしまったら、あくまで同じ会社でコツコツと努力を積み重ねるという方が、高い収入につながることが多いと言えるでしょう。
タクシー運転手になるとプライベートも充実
この部分は他の項目以上に、それぞれの会社によって大きく異なる部分だ、ということをあらかじめお伝えしておきます。
例えば会社によっては、鉄道などを運行するような大きな会社のグループ内にいることもあり、その場合、グループ企業の福利厚生サービスと同様のサービスを受けることが可能です。
デパートでの社員割引を利用出来たり、そのグループ企業が保有するホテルや保養施設を、格安で利用できるという場合もあるでしょう。特にタクシー会社は、ほぼ24時間365日稼働し続けるので、社員全員で旅行に行きましょうということはまずありません。
その代わり、会社が契約する温泉施設に家族を連れて一泊旅行が出来るといったような権利を一年に一回与えられる、という会社もあります。社員数が多い会社になると、クラブ活動を積極的に行っている所もあります。
釣りが好きな従業員同士が集まって釣りに行ったり、野球クラブを持っていたり、将棋、囲碁などで強さを競うというクラブ活動なども珍しくありません。
普通の友人同士でするのと何が違うのか、と思われることもあるかもしれませんが、なんとクラブ活動を楽しむための補助金が出されることもあるのです。
またカルチャー教室に通う従業員を援助してくれる場合もあり、英語を学びたい、音楽を学びたいといった従業員たちにも喜ばれています。
近年の外国からの観光客の増加に伴い、従業員に語学を学んでもらうためのクラスを独自に開催している営業所も、珍しく無くなってきました。
こうしたクラスや趣味の活動を通して、将来の自分のキャリアにさらに磨きをかけていくことも出来るようになっています。
タクシー会社に入る前には、全く英語が話せなかった人が、運転手をやっている間に外国の人とコミュニケーションを取れるようになっているなんて、誰が想像するでしょうか。
会社の福利厚生を利用して、自分の人生にさらにステップアップすることだって、可能なのです。
充実した福利厚生を楽しもう
その辺の大企業並みに、福利厚生が整っているタクシー会社も全く珍しくありません。給与に関しては働き方次第となってしまうのですが、400~600万の年収を貰っている方も非常に多く、福利厚生と合わせると大企業の中堅職に就いている方と同レベルの生活を送ることも可能になります。
タクシー会社の基本的な勤務体系は隔日勤務となっており、他の職種よりも多くの休みが得られるようにもなっています。
その空いた日には、格安で家族と保養施設に出掛けて温泉を楽しんだり、会社が契約しているスポーツ施設で汗を流したりなども可能になるという事になります。
会社によっては色々な種類の飲食店と提携していることも珍しくないので、一週間に一回の家族への外食サービスとして、色々なお店に連れて行ってあげることだって出来てしまいます。
会社の援助を利用しつつ、自分の趣味に打ち込むことも可能であり、まったく趣味の無かった人が新しく趣味を見つけたり、友人の輪を広げていったりする事も可能です。タクシー運転手になりたい人が最初に目につくメリットはやはり、高い収入という部分でしょう。
しかし、実はタクシー運転手をする事のメリットの非常に大きな部分は、このような福利厚生の方にあるのかもしれません。
「タクシーはブラック」という印象の強い業界ではありますが、実際に働き始めてみると、実はとても「ホワイト業界」なのかもしれない…という事を実感するでしょう。