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タクシーの夜勤での給料はやはり稼げる

最終更新日 2021年3月8日

監修・著者 株式会社しごとウェブ 佐藤 哲津斗

「タクシー運転手」という職種に対し、ブラック企業のようなイメージを持っている方が意外と多いことに、タクシー運転手自体が驚きを隠せないという事実をご存じでしょうか。

もしかしたら以前にはそういった時代があったのかもしれませんが、「給料が安い」「勤務時間が長い」「福祉が整っていない」といったイメージは今や、全くの誤解となっています。

そのイメージが持たれる最大の理由は、タクシー運転手の基本給が非常に安い事が考えられます。しかし「普通に仕事をしたら」大きく稼げる仕事であることも事実なのです。

そして、自分のペースに合わせた仕事時間が選択出来るような仕事でもあります。

この記事では主にタクシー乗務の「夜勤」についてスポットを当てていくのですが、まずは他に、どのような種類の勤務体系があるのかを見ていきましょう。

タクシー運転手の勤務体系の種類

タクシーの勤務体系は大きく分けて三つあります。「隔日勤務」と呼ばれるもの、そして「日中勤務」、「夜間勤務」です。後半二つは俗に日勤、夜勤と呼ばれます。

まず「隔日勤務」ですが、これは一回の勤務で18時間から21時間連続で仕事をすることを言います。朝の7時からの勤務開始だとすると、勤務の終了は日付が変わった夜の1時から3時になります。

この仕事の特徴は、ここまで長い連続勤務では法律上次の勤務まで最低20時間を置かなくてはならないということ。自動的に次の日は休みになるのです。月の出勤日数はおよそ11日から多くて13日となります。

次の日中勤務ですが、これはごく普通のサラリーマンと同じ時間帯の仕事となります。つまり朝の8時、もしくは7時から夕方の5時までの仕事です。ただし土日もタクシーは動くので、休みは希望に応じてのシフト制となります。

そして夜間での勤務ですが、これはまさに日勤の逆となります。つまり夜の5時、もしくは6時台にスタートしておおむね8時間の勤務をするというものです。

場合によってはもう少し長めのシフトになることもあるのですが、それでも10時間を超えることは殆どありません。もし、超える場合は本人の希望による場合がほとんどです。

隔日勤務はひとりの運転手が一台のタクシーを一日中動かし続けるというパターンなのに対し、日勤と夜勤は二人のドライバーでひとつのセットということになります。

日勤の希望者がいないと夜勤というシフトは成り立たないため、会社によっては隔日勤務シフトのみという場合もあります。

最も稼げるのは夜の時間帯?

この三つのシフトの中で、最も効率よく稼げるのが夜の時間帯というのは本当なのでしょうか。

それは、確かにそう言えます。一つの理由としては、夜の時間帯はタクシーの料金が割り増しになるからです。

タクシー運転手の給料は基本的に歩合制で、売り上げた内の何割かがそのまま運転手の給与となるので、当然乗客の支払額が大きくなる割り増し時間帯は、会社にとってもドル箱タイムとなるからです。

夜の時間帯になってくると特に、他の公共交通機関がどんどん少なくなっていき、日付が変わるころにはタクシーくらいしかなくなってしまうのも美味しいポイントと言えるでしょう。その時間に移動したい方は、自分の車か徒歩以外ではタクシーが主な手段となるからです。

そして日中の時間であれば「最寄りの駅まで」という程度で移動距離も短いのが普通ですが、夜間の場合は目的地までタクシーで行かなくてはならなくなるので、必然的に長距離移動も増えることになります。

東京の新宿近辺の飲み屋街で乗り込んできた方が、例えば20000円以上の乗車賃となる多摩の方に帰りたい方だった、ということも珍しくはないようです。

また会社員が幾人かで乗り込んできて、それぞれの目的地に一人づつ送ることもあります。彼らの側からは運賃を割り勘できてお得になるのであり、運転手側からはある程度の近い範囲でみるみるうちに乗車賃が上がってくので、これ以上美味しい話もありません。

しかも集団で乗り込んでくれたら、それだけトラブルも少なくなるので、安心感も得られるでしょう。このようなパターンが幾度か続くと、一晩だけで5万~8万という金額を稼げることも珍しくなくなります。

売り上げの5割が運転手に還元されるというのが最も多いパターンなので、月の総売り上げが100万を超えるような方であれば、タクシーの仕事で600~800万円ほどの年収を誇る方も珍しくありません。

夜になってくると乗客が集まる場所が、日中と比べてさらに狭くなるので、一か所で客を待つのではなく、タクシーを動かし続けて道端の客を探す方法である「流し」でも、かなりの高確率でお客を探せるようになるのです。

その変わり、各社のタクシーもその少ない場所に一挙集中することになるため、タイミングと勘が重要です。しかし、もし全くタクシーの経験がない方が夜の時間帯での仕事を狙っているとしたら、注意が必要です。

その理由は、この時間は会社にとっても売り上げの多寡が決まってくる重要な時間となって、各社ともエース級の運転手を配置したい時間帯でもあるからです。

会社によっては、日勤や隔日勤務で確実な成績を残している方を夜間勤務で使いたいと願うものです。特にあまり沢山のタクシー車両を持っていない中小タクシー会社はなおさらです。

普通のルートでは、まずは入社して日中勤務で他の方よりも良い成績をあげ、そして夜間勤務を希望していくということになります。

ただし会社によっては夜勤希望者よりも日勤希望者の方が多く、夜間に働ける方を探しているという場合もあります。また大きな会社になるほどに車にも余裕が出てくるので、本人の希望に沿ったシフトを回してくれることもあります。

働き方を一つに決めてしまって就職を決断するのではなく、まずはいくつかのタクシー会社の情報を収集するところから始めましょう。

仕事内容は日勤と少し違う

夜と昼間では、タクシーを運転して顧客を希望の場所へ運ぶという目的は同じものの、その細かい内容は大きく異なります。

人によってはそのために夜勤をやめ、日勤に回ってしまう場合も多いのです。

例えば日勤において多くの場合、会社員を乗せて希望の場所に送ったり、高齢者などを病院などに送ったりという、ごく普通の仕事です。駅で出待ちして送ったり、電話を受けてその家にまで迎えに行ったりすることもあるでしょう。

ただ重要なポイントは、ごく普通の客をごく普通の場所に送るということです。勿論その中にも沢山のドラマはあったり、変わった乗客を乗せることがあったり、中にはトラブルになる場合もゼロではありません。

しかし夜勤の場合では、その割合は大きく変わってきます。特に割り増し時間になると、増えてくるのが酔っぱらった乗客です。警察の仕事に密着するテレビの特番では、良く酔っぱらった客に困ってしまい通報したタクシー運転手が登場することがあります。

面白い客がいたもんだ、と私たちはただ笑うだけですが、実は彼らにとっては死活問題なのです。その理由は、乗客本人の許可なく、お金を財布から徴収することは出来ず、トラブルが長引くほどに、本来稼げたであろう時間が無駄に浪費されてしまうからです。

時間が遅くなるにしたがって、人のいる場所が飲み屋街に集約されていくので、乗客の半分以上が酔っ払い客ということも珍しくないこの時間は、日中とはまったく違った対応を求められることも多いようです。

夜の乗務の注意点とは

上述の部分とも少し重なるテーマではありますが、夜勤乗務の時に注意することは日勤の時と比較して、よりシビアなものになります。

例えば、酔っぱらった客の対応は、少し間違うと警察沙汰になってしまったり、会社への悪質なクレームという形になってしまうこともあります。

最近は、車内カメラを常備している会社も以前よりも多くなりましたが、そのような設備がない車を使う場合は、ボイスレコーダーは必須の物となります。そして運転手側は、相手の恫喝や苦情がどれだけ理不尽であっても、不用意に感情を表に出さないことが求められます。

その時間を我慢するだけで、それらが過ぎた後は、全てがこちら有利に働くからです。しかし、もし少しでも相手の言葉や行動に反応し、こちらも熱くなってしまった場合は、結局は喧嘩両成敗が成立してしまう、という事態になりかねないのです。

暴力を受けていても、被害届を受理してもらえない場合さえあるのです。また、乗客の方から道順などを指定して来ることも少なくありません。

これに関しては日中でもよくあることなのですが、夜間になると歩行者や他の車が少なくなることから、時には交通法規を違反するようなことを求められることも出てきます。

例えば、一方通行を少しの区間逆走してくれるよう頼まれることや、信号無視、スピード違反を求められることも少なくありません。

万が一警察に捕まって違反切符を切られるとなると、当然被害を受けるのは運転手であって、乗客の方ではありません。

なによりもタクシー運転手は乗客の命を預かる「運転のプロ」なので、モラルの点からも運転はあくまで交通法規に則った仕方で行う必要があります。

乗客を乗せることはあっても、乗せられることのないように注意しなくてはなりません。加えて犯罪行為に巻き込まれる可能性も、やはり夜の方が大きくなっていきます。

お金を払わずに逃げられる、いわゆる乗り逃げに出会う確率も、昼よりも圧倒的に夜の方が多いようです。

特に車の中に所持品を残しておき、財布を取りに行くと見せかけて、そのまま帰ってこないパターンはその典型です。所持品がビニール傘、新聞や雑誌などあまり価値のないものの場合には、特に注意が必要です。

会社によっては、そういった乗客への対処方法もマニュアル化してあるため、乗車業務に出る前に全て頭に入れておくことが必要です。

メリットを最大限にいかす

少しマイナスな面ばかりが強調されてしまいましたが、仕事には沢山のメリットもあります。

例えば、実際には夜の2時ごろまで、もしくは3時ごろまでの仕事であることが多く、明け方まで働く本当の「夜勤」とは少し違います。

最初のうちは家に着いてから昼過ぎまで寝ることもあるかもしれませんが、慣れてくると10時くらいまでの睡眠で、あとの時間は自由に使えるようになってくるようです。

主に日中が空くので、平日に終わらせなくてはならないような手続き関連で困ることはまずありません。また、日中の時間を趣味などに好きに利用することも可能です。

例えば私の友人で、長年タクシーの夜勤を続けている方がいるのですが、口癖は「明けの時間が最も魚の活性が高い」です。仕事終わりに、そのまま釣りに出掛けていくという強者です。

途中での休憩時間にイスを倒して仮眠を取ることも可能で、仕事前の簡単な睡眠と合わせるとある程度の休養はとれるようです。

しかも日勤と違って、乗客を乗せる時間がさらに多くなるので、昼の時間タクシーの仕事をする以上に、勤務時間が早く終わる感じがするというメリットもあります。そして何よりも最大のメリットは、努力次第でかなりの大きな収入を得られるという点でしょう。

40代、50代、中には60代からタクシー運転手を始める方もいらっしゃるそうですが、全く経験がなく、その年齢から初めて年収800万を狙える仕事が他にあるでしょうか。

ほんの一握りしかいないかもしれませんが、中には年収が1千万を超えているという例もあります。タクシー運転手に求められているのは、過去の経験よりも現状の努力であり、そして実際に今どのような場所でどのような方が集まっているかという情報なのです。

特にそれが夜の時間ともなると尚更です。夕方から夜の割り増し料金になるまでの間は、他の色々な交通機関との競合時間となります。その時間をいかに効率よく乗り切るかが、その日の売り上げに大きな影響を及ぼすのです。

人と接するのが好きな方にも、それほど人と接することが好きではない方にも、タクシー運転手の仕事は向いています。人が好きな方はこれ以上ないくらい面白い経験が色々出来るチャンスでしょうし、人が好きではない方にとっては一人で黙々とこなすタクシー運転手の仕事は、ストレスフリーにも感じられるでしょう。

特に夜勤の仕事は、仕事の後に飲みに行こう!ということもまずありません。誰もが考えている以上にフレキシブルな仕事であるのがタクシーの夜間勤務です。

慣れてしまうと「これ以上の仕事はない!」と感じれるほどに、魅力にあふれた仕事と言えるでしょう。


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